“うめほのり”という酒のCMがある。
うら若き女性が、のんびりと梅酒を楽しんでいる映像だが、彼女の頭には猫のような耳がある。
そして、「ほにょり」と言う。
その猫耳(?)に「ほにょり」の発音具合がのんびり感を醸しているので、思わずこちらまで「ほにょり」と言いたくなってしまう若干の危険性を孕んでいるのだが、今日その危険性は我が父にまで及んでいることを知った。
両親と共に出かけ、細い裏路地を歩いていると不意に父が言いだした。
「あの、女の子が「ほにょり」って言うCMがあるだろう?」
「あるね。“うめほのり”」
「あの猫みたいな耳、どうなってるんだろうか?」
確かに、あれは少し気になる。漫画的猫耳ならカチューシャやらでどうにかなるが、劇団四季のCATSのように、極端な違和感があるような猫耳ではない。
「あれは男の頭にあったらどうだろうか?」
急な話の転換に、私は父の言わんとするところが分からなくなった。
「……なんで?」
「あれが自然と生えてくるのであれば“うめほにょり”を飲んでみたい」
「いや、生えないから」
「そうか」
「すると、あれか。父上は猫耳をつけてみたいと仰せか」
「ほにょり」
父のカタストロフィは若干始まっている気がする。
父方の祖父の供養に出かけた時の話である。
おまけ
母と帰りがけ、気になったことを話した。
「最近、日本のサスペンスやミステリーで“美人女将殺人事件”とか“美人OL”とか見なくなったね」
「そう言われればそうね」
「だからって、“ぶさいく殺人事件”は無いよね」
「それは、俳優さんたちもやりたがらないし、視聴率がとれないでしょう」
「“美人女将(65)殺人事件”だったら?」
「……美人女将は40歳代までがいいわね」
「“美人女将(由美かおる)湯けむり殺人事件”」
「お母さんはあんまり見たくないわ」
このような話をしていて、最終的に見てみたいような、見てみたくないような微妙なサスペンスタイトルを考えることになった。
結果
「“鍵を握るのは歩道橋に残された手袋! 夢見る乙女(32)失踪事件”」
「乙女は32歳までOKなの?」
乙女心を忘れない限り、女はいつまでも乙女ですぜ。